今展では思いがけない再会が幾つかありました。
吹きガラスのとりもと硝子店、鳥本雄介さんもそのおひとり。
日本のスタジオガラスのパイオニアのおひとりで、
現在も活躍中の荒川尚也さん。
京都にあるその晴耕社ガラス工房で
長くスタッフとして働いていらっしゃいました。
2003年、第二回「工房からの風」に荒川尚也さんが出展くださったとき、
スタッフとして同行されていたと伺って驚きました。
まだ、「ニッケ鎮守の杜」や「手仕事の庭」がなくって、
コンクリの花壇だった時代!のことです。
荒川さんが廃校になった小学校のガラス戸を引き取って、
そのガラス面もゆらぐ建具を、インスタレーションのように展示くださったのでした。
その時、黙々と大変なワークをしてくださっていた鳥本さん。
その後、3年ほど前に京都の荒川さんの工房を私がお訪ねしたときにも、
お会いしていたとのこと。
鳥本さんはスタッフとして制作中でしたから、
私は認識できていなくって申し訳なかったのですが、
こうして、独立を果たされて、この場に作家としてやってきてくださったこと、
とてもとてもうれしかったのです。
(応募用紙にはそんなこと何も書いていらっしゃらなかったので、
後で伺ってびっくりしたのでした)
Q
とりもと硝子店さんは、「工房からの風」に、どのような作品をお持ちくださいますか?
A
グラスや皿、鉢などのテーブルウエア、ペンダントライト、
花入れといった生活の中で使う道具をメインに持っていきます。
波紋の花器と名付けられた作品。
美しい吹きガラスならではのフォルムですね。
Q
とりもと硝子店さんにとって「工房からの風」は、どのような風でしょうか?
A
風船に手紙をつけて飛ばす時の願いや高揚感を、
まだ見ぬ土地の人に届けることが出来る風になりたいです。
14年間修業させていただいた親方から、
ガラスに関することはもちろん、日々の暮らし方、
ものの見方、話し方、生きていく力などの多くのことを学びました。
親方が修業していた時代のスピリッツも伝えて頂きました。
とてもわくわくしました。
先人たちから、言葉や行動で伝わってきた大切なことを消化し、
自分だけで持っているのではなく、
自分の言葉や行動で人に届けられる風でありたいと思っています。
蓮葉盆という名の器。
茶菓から食卓、インテリアのしつらいにも多様したくなる透明のガラス。
前回ご紹介した石渡さんがミーティングで印象的だったとお伝えしましたが、
鳥本さんもその熱心さが印象的でした。
瞬きもせず一心に私や風人さんの話を聞いてくださっているのです。
一言漏らさず聴こう!という感じで。
石渡さんの頷き続ける「動」と、
鳥本さんの不動の「静」。
どちらからも伝わってくる真剣さに、
こちらも背筋が伸びたのでした。
Q
鳥本さんのお名前、あるいは工房名についての由来、
またはエピソードを教えてくださいますか?
A
とりもと硝子店。
鳥本と漢字で書くと、
「しまもと」と間違えられることが多いので平仮名表記にしました。
すっごくよくわかりました!
案内状には鳥本さんの作品も掲載しているのですが、
今年の果実、レモンを入れた素敵な瓶があるのです。
それもこちらからもご覧いただきますね。
(こんな風に、レモンを漬けたい!)
とりもと硝子店さんの出展場所はニッケ鎮守の杜に入って中央の下草の中。
お隣はRenさんです。
硝子の調合から行い、しっかりとした技術をもった鳥本さんのガラス作品。
そのものづくりは先細ることなく、
今展を機にますます豊かになっていくと期待しています。
written by sanae inagaki